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外国人の健康保険と年金を解説 — 社保と国保の違い・脱退一時金の申請方法
社保と国保の違い、毎月の保険料目安、帰国時の脱退一時金の受け取り方、2027年から始まるビザ更新への影響まで。外国人向けに公的データで整理。
会社員か、それ以外か——2つの保険ルート
日本の健康保険と年金には、大きく分けて2つのルートがあります。
ルート1: 社会保険(会社員向け)
会社に雇用されている場合、健康保険と厚生年金がセットで適用されます。保険料は給与から天引きされ、会社と従業員が半分ずつ負担します。手続きは会社がやってくれるので、自分で区役所に行く必要はありません。
2024年10月からは、週20時間以上・月額賃金8.8万円以上で働くパートタイム労働者も社会保険の対象になりました。
ルート2: 国民健康保険+国民年金(それ以外)
フリーランス、自営業、無職、学生——会社の社会保険に入っていない人は、住んでいる市区町村の国民健康保険(国保)と国民年金に加入します。こちらは自分で届け出が必要です。
どちらのルートに入るかは「自分で選ぶ」ものではなく、雇用形態で自動的に決まります。会社が社会保険に入れてくれない場合は、自分で国保+国民年金に加入する必要があります。
国民健康保険の加入手続き——「自動」ではない
社会保険と違い、国保は届け出をしないと加入できません。住民登録をしただけでは保険証は届きません。
手続きの流れ:
- 住んでいる区の区役所(または市役所)の国民健康保険の窓口へ行く
- 在留カードとパスポートを持参
- 加入届を記入して提出
- その場で保険証(またはマイナンバーカードでの資格確認)が発行される
届出期限は資格を取得した日から14日以内です。届出が遅れても、遡って保険料が請求されます。転入届と合わせて済ませるのが効率的です。手続きの段取りは引っ越し後の区役所手続きで解説しています。「届け出てないから払わなくていい」とはなりません。
2024年12月以降、従来の紙の保険証は原則として新規発行されていません。マイナンバーカードが保険証として機能する仕組みに移行しています。マイナンバーカードがない場合は「資格確認書」が発行されます。
保険料はいくらかかるのか
社会保険の場合
給与に対して一定の料率が掛かり、会社と折半します。健康保険料率は協会けんぽの場合で約10%(自己負担は約5%)。これに厚生年金保険料(約18.3%、自己負担は約9.15%)が加わります。
月収30万円の会社員なら、給与から引かれる社会保険料の合計は約4.3万円が目安です。
国民健康保険の場合
国保の保険料は自治体によって異なりますが、基本的に「所得割(前年の所得に応じた額)」と「均等割(加入者1人あたりの定額)」の合計です。
保険料の計算方法は厚生労働省のサイトで確認できます。
来日1年目は日本での前年所得がゼロのため、均等割のみの低い保険料になることが多いです。2年目以降、前年の日本での収入に基づいて保険料が跳ね上がることがあります。この「2年目の衝撃」に戸惑う外国人は少なくありません。
年収別の保険料シミュレーション(国保+国民年金)
具体的にどのくらいかかるのか、新宿区在住・単身・40歳未満の場合でシミュレーションしてみます。国民年金は全国一律¥17,510/月(2025年度)として、国保は新宿区の料率(2024年度)に基づく概算です。
| 年収(給与収入) | 国保(年額・概算) | 国民年金(年額) | 合計(月額換算) |
|---|---|---|---|
| 200万円 | 約9万円 | ¥210,120 | 約¥25,000/月 |
| 300万円 | 約17万円 | ¥210,120 | 約¥32,000/月 |
| 400万円 | 約27万円 | ¥210,120 | 約¥40,000/月 |
| 500万円 | 約37万円 | ¥210,120 | 約¥48,000/月 |
※国保の保険料は所得割+均等割の合計。介護保険料(40歳以上)は含まれていません。扶養家族がいると均等割が増加します。区によって料率が異なるため、正確な金額は各区のサイトで確認してください。
社会保険(会社員)の場合は、上表の約6〜7割が自己負担額の目安です。残りは会社が負担してくれます。
低所得の場合は均等割が7割・5割・2割軽減される仕組みがあります。
国民年金の場合
国民年金の保険料は全国一律で、2025年度は月額¥17,510です。所得に関係なく定額ですが、収入が少ない場合は免除・猶予制度を利用できます。全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除、納付猶予の5段階があり、学生向けの特例もあります。
年金は「掛け捨て」ではない
「どうせ日本を離れるのに年金を払うのは無駄」——こう考える外国人は多いですが、日本の年金制度には帰国する外国人向けの仕組みが用意されています。
脱退一時金
日本を出国した後、脱退一時金として保険料の一部を受け取れます。
条件:
- 6ヶ月以上の年金加入期間がある
- 日本に住所がない(出国済み)
- 年金の受給権がない(10年未満の加入)
- 出国後2年以内に申請する
計算上限: 現在は60ヶ月(5年)分が上限です。6年以上払っていても、5年分しか計算されません。ただし、2025年の法改正で上限が8年(96ヶ月)に引き上げられる予定です。施行は法律公布から4年以内とされています。
脱退一時金の受取額シミュレーション
国民年金に加入していた場合の脱退一時金は、加入月数に応じた定額です(2025年度の計算基準に基づく概算)。
| 加入期間 | 受取額(概算) |
|---|---|
| 6〜11ヶ月 | 約¥50,000 |
| 12〜17ヶ月 | 約¥100,000 |
| 24〜29ヶ月 | 約¥200,000 |
| 36〜41ヶ月 | 約¥300,000 |
| 60ヶ月(上限) | 約¥500,000 |
厚生年金に加入していた場合は、給与額と加入月数で計算されるため、人によって大きく異なります。月収30万円で3年間加入した場合、脱退一時金は約¥50万〜¥60万が目安です。
注意点: 脱退一時金を受け取ると、その期間の年金加入記録は消えます。社会保障協定がある国の出身者にとっては、加入期間の通算ができなくなるデメリットがあります。受取額と、将来の年金通算の可能性を天秤にかけてから申請するのが賢明です。
社会保障協定
日本は23カ国と社会保障協定を結んでいます。対象国はドイツ、アメリカ、フランス、カナダ、オーストラリア、韓国、中国、イタリアなどです。
この協定には2つの機能があります。
- 二重加入の防止: 派遣期間が原則5年以内なら、母国の年金制度にだけ加入すればよい
- 加入期間の通算: 両国での加入期間を合算して受給資格を判定できる
ただし、イギリス・韓国・中国・イタリアとの協定には加入期間の通算がありません。二重加入の防止のみです。自分の国が対象かどうかは厚生労働省のページで確認できます。
2027年6月——保険料の滞納がビザ更新に影響する
2027年6月から、国民健康保険料や国民年金保険料を滞納し、督促にも応じない外国人は、在留資格の更新・変更が原則として認められなくなります。2026年度にシステム改修が行われ、市区町村の保険料納付状況が入管のデータベースと連携される予定です。
これまで、保険料の未納が直接的にビザ更新の可否に反映されることはありませんでした(永住権申請では以前から審査対象でしたが、一般の在留資格更新では明示的なチェックがなかった)。制度変更後は、すべての在留資格の更新・変更で納付状況が確認されます。
払えない場合の対処法:
滞納すること自体が即座に不許可になるわけではなく、「督促に応じない」ことが問題とされています。収入が少なく保険料を払えない場合は、放置せず、以下の対応を取ってください。
- 国民年金: 免除申請・猶予申請を区役所で行う
- 国民健康保険: 区役所の窓口で分割納付や減免の相談をする
免除を受けている期間は「滞納」にはなりません。手続きをするかしないかで、結果が大きく変わります。
病院での使い方
日本の健康保険の自己負担割合は3割です。医療費が¥10,000かかった場合、窓口で支払うのは¥3,000です。残りの¥7,000は保険が負担します。
受診時のやりとり:
受付: 「保険証をお願いします」 あなた: マイナンバーカードを提示(または資格確認書を提出) → カードリーダーにかざす → 本人確認 → 受付完了
保険証やマイナンバーカードなしで受診すると、いったん10割(全額)を自己負担し、後日保険者に7割分の還付を申請する流れになります。英語対応の病院を探すには英語が通じる病院の探し方も参考になります。
高額療養費制度
1ヶ月の医療費が高額になった場合、自己負担額に上限が設けられています。70歳未満の一般的な所得の場合、月額の上限は約¥80,100です。これを超えた分は後から払い戻されます。
入院や手術が予定されている場合、事前に「限度額適用認定証」を保険者から取得しておくと、窓口での支払いが上限額までに抑えられます。
うまくいかない時
| 状況 | 対処法 |
|---|---|
| 会社が社会保険に入れてくれない | 年金事務所に相談。加入要件を満たしていれば会社に是正指導が入る |
| 届出期限(14日)を過ぎてしまった | 遅れても届出は可能。ただし保険料は資格取得日まで遡って請求される |
| 保険料が払えない | 区役所で免除・減免・分割納付の相談。放置するとビザ更新に影響する可能性がある |
| マイナンバーカードがない | 区役所で「資格確認書」を発行してもらえる |
| 転職の間に空白期間ができた | 退職日の翌日から14日以内に国保に加入する必要がある |
| 日本語が不安 | 厚生労働省が15言語対応のパンフレットを用意している。区役所に多言語対応の窓口がある自治体も |
別の方法
民間の医療保険に入ればいい?
日本の公的健康保険に加入した上で、追加の保障として民間保険に入ることは可能です。ただし、民間保険だけでは公的保険の加入義務は免除されません。2027年6月以降、公的保険に加入していないこと自体がビザ更新のリスクになります。
母国の保険でカバーできる?
母国の海外旅行保険や駐在員保険は、日本の医療機関で直接使えない場合がほとんどです。いったん全額を立て替えて、帰国後に請求する形になります。いずれにせよ、日本の住民登録をしている以上、国保への加入義務は残ります。
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参考:
- 日本年金機構『国民年金制度の概要(英語)』https://www.nenkin.go.jp/international/japanese-system/nationalpension/nationalpension.html (アクセス日: 2026-02-17)
- 日本年金機構『脱退一時金の制度』https://www.nenkin.go.jp/international/japanese-system/withdrawalpayment/payment.html (アクセス日: 2026-02-17)
- 日本年金機構『社会保障協定』https://www.nenkin.go.jp/service/shaho-kyotei/shaho.html (アクセス日: 2026-02-17)
- 厚生労働省『国民健康保険の保険料・保険税について』https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21517.html (アクセス日: 2026-02-17)
- 厚生労働省『海外で働かれている皆様へ(社会保障協定)』https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/shakaihoshou.html (アクセス日: 2026-02-17)
- 厚生労働省『高額療養費制度を利用される皆さまへ』https://www.mhlw.go.jp/content/000333280.pdf (アクセス日: 2026-02-17)
- 日本年金機構『保険料の免除制度』https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/20150428.html (アクセス日: 2026-02-17)